9月入学の議論について

日本では9月入学の議論が話題になっていますが、海外では4月入学の学校の方が珍しいのをご存知でしょうか?

シンガポールでは現地校は1月、インターナショナルスクール は9月、日本人学校は4月始まりです。我が家は娘の学校は9月、息子は4月に開始と違っています。

息子は小学校入学前にインターへの転校を考えていますが、インターでは1月、4月入学を選択する生徒も多く、期の途中での受け入れもしっかりしていますし、学業面でも今のところ特に問題を感じません。

周りの保護者と話をしていて、日本の9月入学が大きく影響してくるのは大学入学時です。インターナショナルスクールの生徒が日本の大学入学する場合は、現制度では、インターを卒業してからギャップイヤーが生じますが、9月入学も選択できるようになれば、特に4月から8月生まれのインターの生徒には朗報だと思います。

9月入学の議論を見ていく中で、慶應大の中室牧子教授の「科学的根拠に基づいて、「9月入学」を考える」というスライドを見ました。『学力』の経済学の本を読んだことがあったので、中室教授の名前は知っていましたが、このスライドは定量的な分析が載っていて興味深かったです。詳細は下記のリンクからご覧ください。

・文部省が1213の自治体に行った調査では、双方向でコミュニケーションする遠隔指導を実施している自治体は5%ととても少ない。

・臨時休校の影響を受けやすいのはより低学年の子供で、積み上げて勉強することが必要な算数など理系科目への負の影響が大きい。

・従来の「9月入学」は子供たちの5歳の秋に入学させる(入学を半年早める)ことを念頭に入れているのに対して、今回議論されている「9月入学」は、子供を6歳の秋に入学させる(入学を半年遅らせる)もの

・ノルウェーの行政データを用いた研究によれば、入学時期を遅らせ、就学年齢が高くなると、認知能力(IQ)や学歴には影響はないが、30歳ごろまでの賃金が低くなる(24歳で-9.2%)、逸失生涯所得の影響は長期にわたって持続。

・高等教育に在籍している学生のうち、海外への留学者は0.8%、受け入れは3.5%にとどまっており、他の先進国と比較してかなり低い。

・日本への留学生が少ない理由について、就職活動の早期化、言語力の低さ、教育機関同士での単位互換が行われないことなどを指摘しており「入学時期」が決定的な要因であるとの主張は多くない。

科学的根拠に基づいて、「9月入学」を考える。https://bit.ly/2TlmYEa

この記事について日本の友達と話をしたのですが、動画を閲覧するだけのケースも入れると、3割ぐらいの公立校がデジタル教科書や教材を利用して家庭学習を行なっているとテレビで報じていたそうです。

シンガポールでは現地校、インターナショナルスクールが小/中/高校がほぼオンライン授業に移行していることや、ロックダウンが解除された後も当面オンラインと通学を併用していく柔軟な政策と比べると、日本のオンライン授業利用には物足りなさを感じます。

今回議論されている4月→9月に入学を半年遅らせるというのは、インターの生徒で日本の大学に入学したい生徒にとってはあり得ない選択肢かと思います。今以上にギャップイヤーの期間が延びるのではないでしょうか。

4月入学以外に9月入学も選択できるようになれば海外から日本の大学へ留学しやすいと思いますので、単位互換など留学生向けの体制やサポートも充実してもらいたいです。中室牧子さんは教育の効果について定量的に分かりやすく説明できる数少ない日本の専門家だと思います。