主要国と比べた日本のインターナショナルスクール

ボストンコンサルティンググループ(BCG)作成の『日本及び主要国のインターナショナルスクールのレポート(金融庁調査)』が180ページの超大作で興味深かったので紹介します。

このレポートが発行された背景には、日本が「世界に開かれた国際金融センター」としての地位の確立を目指すため、高度外国人材の子弟に対する教育環境の更なる充実が必要で、彼らの期待水準を満たすようなインターナショナルスクールの高度化が求められていることがあるようです。

・質・実績がトップレベルのインターは日本では5校程度(ASIJ、西町、KIST、セントメリーズ、清泉 – 定員は5校で約4000人程度)これらのインターは国際的に通用するカリキュラムかつ欧米トップスクールへの進学が想定できる (KIST/ケイ・.インターナショナルスクール東京がランクインしたのが意外だったが、最近のケイインターのIBグローバルランキングを見ると納得)

・日本駐在の外国人駐在員のコメントが記載されていますが、日本のインター環境に否定的な意見が多いのが印象的でした(海外のインターの充実した環境を知っていると納得感があるコメントでした)

・日本人が多いインターは日本人向けに良い成績を取ることを目的とする極めて前時代的な教育を受けることになるため、好ましくない/学校のHPに大きな違いがなく説明会もない/日本のインターは進学実績が良くない/そもそも候補となるインターが少ない/ブリティッシュスクールが少ない/日本の文化を体験できるような課外活動がない/親同士が交流する機会がない/学校の先生の経歴や学校の様子、卒業後の進路が載っていない/実際に入学してみると想像と違った/口コミが少ない

日本へインター誘致に関する経営者の声(海外有名インター理事やインター校長などインタビュー)

・東京は魅力的な市場で長らく進出を検討しているが、用地確保が困難であり、運営を任せられるパートナーの探索が困難。一方、中国では政府はインター新設を促進しており、海南市では用地を準備してくれた

・日本政府からの補助が乏しい上に3年分の運営費の供託が必要で(!)財政負担が大きい。初期投資が10億円かかる

・香港では設備投資費用を工面するために学校債を活用できる

・シンガポール政府がインターを積極的に誘致していた際にインターを新設したが(元シンガポールインターの校長)政府から用地の賃借ができただけでなく、30年返済の低融資ローンを受けることができた

・質の高い教師の獲得は国際的な競争となっているが、日本の政府からの財政支援がないため、高額な給与を提示できない。高給取りのシンガポールのインターに優秀な教師を取られてしまう

・二重国籍の子弟を加えると2/3の子女が日本人のインターも存在。

・IBカリキュラムを採用する学校の数:東京13校、シンガポール24校、香港41校、上海21校、

・イギリスカリキュラムを採用する学校数:東京11校、シンガポール26校、香港20校、上海19校

・英語以外の言語の選択肢:中国語(北京語)東京9校、シンガポール43校、香港55校、上海27校、
フランス語:東京11校、シンガポール30校、香港27校、上海16校、
スペイン語:東京10校、シンガポール22校、香港23校、上海19校、
(娘は英語に加えて学校で中国語、スペイン語、フランス語を学んだが、東京のインターでは同じように学ぶのは難しかったと思う)

・中国、韓国、シンガポールに進出しているDulwich College(インター)のSTEAM教育の話も興味深かった。海外展開は2003年からと20年程度しか経っていないが、シンガポールでも評判が良いインター

・日本では各種学校の教師に対して、品質を担保するような明確な基準が存在しない。一方で、シンガポールではローカル教育のインターへの転職プログラム(12ヶ月のオンライン研修によりノッティンガム大学の教育大学院の国際資格が取得可能)また8つのインターで実地研修も行う。

主要国の私立校、カリキュラムと海外進出リスト

・IBDPの利用校:米国(約1600大学)、英国(全大学)、国内大学(63校)

・A-level利用校 米国(約800大学)、英国(全大学)、国内大学(なし)

・AP利用校 米国(全大学)、英国(ほぼ全大学)、国内大学(なし)

https://www.fsa.go.jp/common/about/research/20210831_2/20210831.pdf